株式投資では、1日の値動きに「値幅制限」が設けられています。株価が値幅制限の上限になるまで買われた銘柄を「ストップ高銘柄」、下限になるまで売られた銘柄を「ストップ安銘柄」と呼びます。
強制的に取引の上限を迎えてしまった突発的な状況に、「じっくり保有を考えていた銘柄が、寄り付きから思いがけずストップ高に!」と驚く方もいれば、「翌日の値上がりを見越して持ち越すべきか?それとも手仕舞いか?」と、ひとつの節目を迎えた銘柄の今後を見越して、売買の方法や翌日の予測に役立つ情報を探しているという方も多いのではないでしょうか?
日ごろ聞き慣れていても、突然訪れてその先の予測が困難なストップ高とストップ安銘柄。「売れない」「買えない」ケースへの対処法に加えて、過去のストップ高銘柄を元に翌日の株価を予想する投資戦略などを、合わせてお伝えしていきます。
目次

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ストップ高・ストップ安とは?
ストップ高・ストップ安とは値幅制限の上限まで価格が上昇・下落することです。つまり、買いや売りが殺到しても定められた範囲以上の値動きは起こらないようになっています。
ここでは、どういった理由でストップ高・ストップ安になるのか、なぜ値幅制限が設けられているかなどの基礎知識をご紹介します。また、連続ストップ高の最高記録を保持しているフィスコ(3807)を例に、実際のストップ高銘柄の値動きも見てみましょう。
ストップ高(S高)とは?
先程もお伝えしたように、ストップ高とは値幅制限の上限まで株価が上昇することで、S高とも表記されます。その後も値下がりしないことを「ストップ高張り付き」ともいい、ストップ高が途中で終わると「一時ストップ高」、「ストップ高がはがれた」といわれることがあります。
テレビや雑誌で特集されたお店で長い行列ができたり、商品が急に品薄になったりと、私たちはついつい話題になったものを追いかけてしまいがちです。
ストップ高も同じで、新しい商品が発表されたり実験が成功したりと良いニュースが流れることで株を買う人が増えてストップ高になります。
もし、制限がないとどうなるでしょうか。好決算や画期的な新商品のニュースから株を買う人が増えると、1日のうちに株価が際限なく上昇し、バランスを崩しかねません。株主も莫大な利益を得る可能性がある一方、加熱相場で高値掴みをしてとんでもない額の損失を出してしまう可能性も考えられます。このような市場の混乱を防ぐためにも、値幅制限は不可欠と言えるでしょう。
ストップ安(S安)とは?
ストップ安とは、値幅制限の下限まで株価が下落することで、S安とも表記されます。その後も値上がりしないことを「ストップ安張り付き」ともいい、ストップ安が途中で終わると、「一時ストップ安」、「ストップ安がはがれた」といわれることがあります。
もし、制限がないとどうなるでしょうか。ある企業の不祥事で株を売る人が増えると1日のうちに株価がどんどん下がり続け、最悪の場合株価が0円になる可能性も考えられます。株主も多額の経済的損失への不安から株式投資自体を避けるようになるかもしれません。値幅制限は、このような株主にとってリスクの高すぎる事態を防ぐためにも役立っています。
18連続ストップ高を記録した銘柄「フィスコ(3807)」
2009年2月、フィスコの株価はこの1ヶ月間で12,000円から92,000円まで上昇。19回連続ストップ高で7.6倍になりました。

出典:東証Project
同時期、上昇を続けていたフィスコとは対照的に日経平均株価は前月から下落が続き、8,000円近くを推移。フィスコが13日目のストップ高となった2月20日には7,500円を下回りました。
このような相場の平均と異なる株価の動きは、たとえ好材料が理由でも急騰のあとに暴落となることが多く、安易な気持ちで手を出さない方が賢明です。ちなみにフィスコの高騰は大株主による経営への参加を目的にした大量買いが理由で、突然の大量売りが行われて株価は急落。結局元の株価に近いところに落ち着きました。
この後値幅制限は改定され、その後18日連続を上回る記録はありません。急な値動きで相場の混乱をなるべく避けるためにも、やはり値幅制限があった方が企業にとっても投資家にとってもいいということですね。
次は、値幅制限の仕組みとストップ高が起きたときに知っておきたい比例配分というルールをご紹介します。
ストップ高、ストップ安の仕組み「値幅制限」と「比例配分」
値幅制限があるおかげで、1日で株価が数百倍になることも、投資金額を一度に失うこともありません。値幅制限の仕組みを知らず、せっかくのストップ高銘柄の売り時を逃した…なんて失敗を避けるためにも、まず値幅制限表で確認をしておきましょう。
ストップ高・ストップ安になると、売買のバランスが偏ってしまうので証券取引所のルールにそって「比例配分」という制度で株価をつけます。また、特定の条件下では値幅制限の拡大も考えられますので、不測の事態にも慌てず対応できるよう、頭の隅に置いておきましょう。
値幅制限(ストップ高・ストップ安)の一覧表
日本の証券取引所ではすべての上場銘柄に値幅制限(制限値幅)を適用していて、前日終値の株価を基準に下記のように設定されています。
前日終値の株価 | 制限値幅 |
---|---|
~100円未満 | 30円 |
100円以上~200円未満 | 50円 |
200円以上~500円未満 | 80円 |
500円以上~700円未満 | 100円 |
700円以上~1,000円未満 | 150円 |
1,000円以上~1,500円未満 | 300円 |
1,500円以上~2,000円未満 | 400円 |
2,000円以上~3,000円未満 | 500円 |
3,000円以上~5,000円未満 | 700円 |
5,000円以上~7,000円未満 | 1,000円 |
7,000円以上~10,000円未満 | 1,500円 |
10,000円以上~15,000円未満 | 3,000円 |
15,000円以上~20,000円未満 | 4,000円 |
20,000円以上~30,000円未満 | 5,000円 |
30,000円以上~50,000円未満 | 7,000円 |
50,000円以上~70,000円未満 | 10,000円 |
70,000円以上~100,000円未満 | 15,000円 |
100,000円以上~150,000円未満 | 30,000円 |
株価1,200円のとき 値幅制限は300円
ストップ高のとき 1,500円
ストップ安のとき 1,100円
長い値幅制限表にギョっとした人もいらっしゃるかもしれませんが、これを正確に覚えておく必要はありません。だいたい20~30%で動くことが多いと把握しておき、必要なときに再度確認すると良いかもしれません。
続いて値幅制限の拡大要件についてみてみましょう。
値幅制限(ストップ高・ストップ安)の拡大
値幅制限の拡大は
- 3営業日連続でストップ高・ストップ安
- 3営業日連続で比例配分がない
- 3営業日連続でザラ場中に出来高がない(※大引けの出来高は除く)
これらを全て満たした場合に行われます。
ストップ高が連続して拡大する場合には上限のみを2倍、ストップ安が連続して拡大する場合には下限のみを2倍に拡大します。ただし、拡大された日以降、ストップ高・ストップ安の値段以外で売買が成立した場合には、翌営業日より通常の制限値幅に戻ります。
ストップ高比例配分とは?
板情報の見方と気配値
価格ごとの買い注文と売り注文の一覧表を「板情報」といい、投資家は買い気配値・買い気配株数や売り気配値・売り気配株数を見て注文を出します。例えば、「1株100円で100株売りたい」という場合、板情報を見て「1株100円で100株で買いたい」という人がいればすぐに取引が成立します。

※2018年9月7日時点
上の表は三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)の板情報です。
真ん中の「気配値」とは、買い方(買いたい人)や売り方(売りたい人)が希望する値段、両端の「気配株数」は、買い方・売り方が希望する株数を表します。板情報を見れば、どれくらいの値段で何株購入・売却できるのかを判断することができます。
一般的にきりのいい数字や直近の高値は意識されやすく、注目が集まりやすいため他の値と比べて板が厚く(注文数が多く)なります。この板で見ると669.0円の売気配株数が他の売気配株数と比べて厚くなっていることが見て取れます。
板情報からは、売買が活発かどうかも判断することができます。例えば、気配値に並ぶ数字が1円ごとなど細かく並んでいると「板が厚い」(売買が活発)、5円ごとや10円ごとなど幅広に並んでいたり数字が不規則に飛んでいたりすると「板が薄い」(あまり注目されていない)と判断できます。
三菱UFJは0.1円ごとで万単位の株数も多く並んでいることから、「板が厚い」と判断できます。
特別気配と更新値幅
株の売買状況がどちらかに極端に偏ると「特別気配」になります。特別気配は、「需要と供給のバランスが崩れています!」と投資家の皆さんにお知らせしている状態です。
特別気配の場合、板情報には「特」や「ト」といった表示がされ、「特」が買い注文についていたら「買い優勢」、売り注文についていたら「売り優勢」です。ストップ高になりそうかどうかを考える一つの指標として注目しておきましょう。
特別気配になると通常の売買が一時停止され、注文を出しても取引ができなくなります。その代わり、すぐに次の売買を約定(成立)させるために、買いが多いと株価が自動で繰り上げられ、売りが多いと株価は自動で繰り下がっていきます。これを「板寄せ方式」といい、板寄せ方式で使用される上限下限の範囲を「更新値幅」といいます。
値幅制限(ストップ高・ストップ安)の一覧表で制限値幅が前日の終値を基準に変動していたように、更新値幅も一定の範囲内であれば、直前の株価を元に値が変動します。
直前の株価 | 更新値幅 |
---|---|
200円未満 | 5円 |
500円未満 | 8円 |
700円未満 | 10円 |
1,000円未満 | 15円 |
1,500円未満 | 30円 |
2,000円未満 | 40円 |
3,000円未満 | 50円 |
5,000円未満 | 70円 |
7,000円未満 | 100円 |
10,000円未満 | 150円 |
15,000円未満 | 300円 |
20,000円未満 | 400円 |
30,000円未満 | 500円 |
50,000円未満 | 700円 |
70,000円未満 | 1,000円 |
100,000円未満 | 1,500円 |
150,000円未満 | 3,000円 |
株価が600円のとき 更新値幅は±10円
つまり、次の売買が590~610円の範囲であれば約定
ストップ高比例配分とは
特別気配が出て、いよいよストップ高になったとしましょう。東証銘柄だと、全証券会社に最低でも1単元ずつ割り当てができる場合、以下のように比例配分されます。
- 証券会社が出している注文数量が多い順にならべて1単元ずつ株を割り当て
(最高5単元まで) - 上記の分を除いた残りの売り注文は、各証券会社の残りの注文数量に
「按分比率(買い注文と売り注文の比率)」をかけた数量を配分
各証券会社の株数が決まった後、独自に定めた配分ルールで投資家に配分され、注文方法で優先度が変わります。
次は、この優先度を始めとする、ストップ高・ストップ安になった時のケース別対処法をご紹介します。自分の使っている証券会社の配分ルールを把握していれば、より有利な取引ができるかもしれません。
保有してた銘柄が突然ストップ高になったら?
ストップ高・ストップ安になったら、どのタイミングで売買するのがいいのでしょうか。急な値上がり・値下がりに戸惑い、売買のタイミングが分からないという方も多いと思います。
ここでは、ストップ高・ストップ安の際に想定される「売れない・買えない」の対処法をご紹介します。これらの対処法を踏まえていれば、翌日もポジティブな材料や理由が続く「買い」な銘柄を見つけられるはずです。
ストップ高で売れないケース
ストップ高で張り付いてしまったということは、売買の株数が釣り合わず、取引時間中の約定は難しいということです。こういうときの対処法はまず、「成行注文、もしくはストップ高の価格で指値注文」を行います。そして、取引時間が終わるのを待って、比例配分で約定を待ちましょう。
- 成行注文優先
- 時間優先
- 数量優先
一般的に成行注文優先が多く見られますが、SBI証券やマネックス証券は時間優先で、より早い段階で注文を出した人が優先的に株式を配分され、GMOクリック証券や松井証券は数量優先でたくさん注文した人が優先して配分されます。
自分の使っている証券会社が「早いもの勝ち」なのか「大量注文勝ち」なのか、把握しておきましょう。
複数口座を取得しておき、注文方法を証券会社ごとに有利な条件で変えると、比例配分の当選確率もグっと上がって困難な相場を乗り切りやすくなるはずです。
ストップ安で売れないケース
続いて、ストップ安で売れないときを考えてみましょう。原則は「損は少なく、早めに売る」です。買い手がいれば売ることができるので、「成行注文、もしくはストップ安の価格で指値注文」を行いましょう。
「成行注文=価格を指定せずに行う売買注文」ですので、注文時の一番高い・安い株価で売買されてしまいますが、約定しやすいという利点があります。比例配分になる場合はストップ高のときと同じく、「有利な条件で複数注文」との合わせ技がより効果的!
ストップ高で買えないケース
最後に、ストップ高で買えないときも考えてみましょう。ストップ高になった銘柄は注目度が高く、買いたいのに買えなかった投資家が大勢いるはずです。
さて、ストップ高で買うには売るのと同じく、当日中に「成行注文、もしくはストップ高の価格で指値注文」をして、比例配分を利用し手に入れる方法があります。
そしてもう一つ、株価上昇を見込みストップ高の次の日に買ってみるという方法もあります。ストップ高となった銘柄は既に大幅に値上がりしていることから、利益確定を急ぐ投資家がいるので次の日も充分相場に参加できるはずです。
次の日まで待てない!という方は、証券会社が独自に運営する施設取引システムを利用したPTS取引を利用する方法もあります。証券取引所が開いていない時間帯でも取引ができるので、売買どちらも有利な条件でストップ高銘柄を手に入れられる可能性があります。
PTS取引について詳しくは「夜間取引・PTS取引とは」をご覧ください。
もちろん買う前に「買った後すぐに株価が下落しないか」の調査は必要です。
株初心者の方は特にストップ高や加熱相場の勢いに釣られて、ついつい「あがるかも」「今買わなきゃ」というぼんやりとした期待だけで購入し、失敗してしまいがちです。材料をよく吟味し、まだ上がるという根拠が持てたら購入に踏み切りましょう。
これらのケースを踏まえれば売買タイミングも把握しやすく、これ!と決めた銘柄を手に入れやすくなるのではないでしょうか。では、どうすれば「翌日どうなるか?」を自分で判断できるようになるのでしょう。さっそく3つの投資戦略を見ていきましょう。
ストップ高銘柄の翌日を予想する!3つの投資戦略
「できるだけ損したくない」「でも儲けは多いほうがいい」。誰もが思い描く理想の投資ではないでしょうか。
ストップ高銘柄で効率よく約定し利益を得るには、「翌日どのように推移するかを見極める」のが一番です。翌日の株価を判断する基準として3つの投資戦略をご紹介します。過去の傾向から上昇や下降のパターンを予測し、「そのまま張り付き」か「利確」かなどを予想できるようになりましょう。
過去のストップ高銘柄の傾向から、翌日の株価を予想する
実は、ストップ高の翌日も上昇する銘柄には、ある共通の特徴がありました。さっそく過去のストップ高銘柄を見てみましょう。
市場をまたいで比較をすると値動きに違いがあるため、今回は、東証1部銘柄で時価総額が似たもの5つで比較を行いました。たとえばジャスダック・マザーズなどの新興市場と呼ばれる市場では出来高の少ない銘柄が多く、値動きが軽いという特徴があります。
市場ごとの特徴について気になる方は、「株式市場とは?意味と仕組みを分かりやすく解説」をご確認ください。
企業名 | ストップ高前日の株価 (前日比) |
ストップ高当日の株価 (前日比) |
ストップ高翌日の株価 (前日比) |
---|---|---|---|
日本農薬 (4997) |
667 (-0.45%) |
767 (+14.99%) |
803 (+4.69%) |
石原産業 (4028) |
1,282 (-1.00%) |
1,582 (+23.40%) |
1,748 (+10.49%) |
ゲオHD (2681) |
1,417 (+1.29%) |
1,717 (+21.17%) |
1,716 (-0.06%) |
テイカ (4027) |
2,322 (+0.65%) |
2,821(※一時S高) (+21.49%) |
2,791 (-1.06%) |
MS-Japan (6539) |
6,910 (+6.64%) |
7,910 (+14.47%) |
7,780 (-1.64%) |
前日と比較して上がった銘柄が2つ、反対に下がった企業が3つでした。それぞれ上昇理由・下落理由を見てみましょう。
ストップ高から翌日「株価が上昇」した銘柄
日本農薬(4997)
日本農薬(4997)時価総額:54,901百万円(※2018年9月12日時点)
日本農薬は国内初の農薬専業大手企業です。
8月10日に発表された決算は連結経常利益は前年同期比8.3%増、通期計画の38億円に対する進捗率が102.8%とすでに上回っていました。
さらに、8月21日には株式会社ADEKAが持ち株関連会社の同社に対して証券取引所を介さず、企業が不特定多数の投資家から株式を直接買い取るTOB(株式公開買付け)を実施すると発表。
TOBの発表を受け買いが殺到し、TOB価格は1株900円で21日終値を34.9%上回る水準です。買付期間は8月22日から9月19日までとなっています。
ストップ高材料:決算+TOB
石原産業(4028)
石原産業(4028)時価総額:60,576百万円(※2018年9月12日時点)
石原産業は酸化チタンを中心とした無機化学事業、農薬、医薬品などからなる有機化学事業を行っている企業です。
8月10日大引け後に決算を発表し、19年3月期第1四半期(4-6月)の連結経常利益は前年同期比73.0%増の22.2億円に拡大、上期の同損益を従来予想の7億円の赤字→30億円の黒字(前年同期は34億円の黒字)に上方修正し、一転して黒字に浮上する見通しから翌日ストップ高に。併せて、同日子会社の四日市エネルギーサービスを吸収合併を発表しました。
ストップ高材料:決算+吸収合併
ストップ高から翌日「株価が下落」した銘柄
ゲオHD(2681)
ゲオHD(2681)時価総額:66,553百万円(※2018年9月12日時点)
ゲオHDは、レンタルビデオ・リユースショップのチェーンストアを運営している会社です。
19年3月期第1四半期(4-6月)の連結経常利益は前年同期比36.4%増の45.2億円に拡大し、通期計画の91億円に対する進捗率は49.7%に達し、5年平均の21.9%も上回りました。直近3ヵ月の実績である4-6月期(1Q)の売上営業利益率は前年同期の4.9%→5.8%に改善しています。
ストップ高材料:決算
テイカ(4027)
テイカ(4027)時価総額:62,383百万円(※2018年9月12日時点)
テイカは各種化学薬品を製造・販売を行っている、化学メーカーです。
8月8日大引け後に発表した19年3月期の第1四半期(4-6月)連結決算は、売上高が前年同期比13.5%増、営業利益は11.3%増、最終利益は15.4%増と2ケタ増収増益を達成し、ました。機能性用途の微粒子酸化チタンや表面処理製品などの化学品が好調で収益を牽引、米国やアジアなど海外連結子会社の収益拡大も寄与しています。
ストップ高材料:決算
MS-Japan(6539)
MS-Japan(6539)時価総額:53,082百万円(※2018年9月12日時点)
MS-Japanは経理・公認会計士・税理士・弁護士・人事・法務などの分野に特化した転職サポートを行っている企業です。
8月8日大引け後に決算を発表し、ストップ高になりました。19年3月期第1四半期(4-6月)の経常利益は前年同期比93.2%増の3.6億円に拡大し、4-9月期(上期)計画の7.1億円に対する進捗率は51.3%に達し、前年同期の31.7%も上回っています。直近3ヵ月の実績である4-6月期(1Q)の売上営業利益率は前年同期の14.6%と比べて41.3%に急上昇しました。
ストップ高材料:決算
さて、それぞれの材料を見てみると、決算以外にも上昇理由があった場合は、翌日も上昇しているという共通の特徴があることにお気づきでしょうか。
ちなみに、最後にご紹介したMS-Japanは、翌日下落した後9月10日にもう一度ストップ高になり、11日、12日連続で年初来高値を更新しました。理由は9月30日に行われる株式分割を好感していることがあげられます。
過去のストップ高銘柄の傾向から、翌日の株価を予想するには、ストップ高になった理由以外にも今後の期待値が高いポジティブな材料があるか探すこと!
他にも材料がある場合には、下落相場に転じても再び上昇する可能性が高くなります。
ストップ高になると翌日も株価は上がる?
2018年9月12日ストップ高買い気配からストップ高に変わったヘリオスTH(6927)を例に考えてみましょう。
11日のストップ高から朝方も値付かずのまま推移し、午後0時37分、制限値幅上限の前日比150円(17.24%)高の1,020円ストップ高買い気配となっていました。

先ほど板情報の見方と気配値でもお伝えしましたが、気配値を見ると数字が飛んでいることや、買い気配に並ぶ数字がほとんど100台ということから板が薄いということがわかります。
その後まもなくストップ高になり、比例配分が行われる流れとなりました。

PTS取引は1,130円(※9月12日17時時点)、ストップ高より株価が上昇していることから、翌朝の上昇も想像に難くなさそうです。

ヘリオスTHは子会社のフェニックス電機が11日、近紫外から近赤外光の広帯域の波長を有するLED素子を開発発表が材料視されました。
今後、医療・分析・科学計測から民生機器など広範な産業分野で、従来のハロゲンランプなどを代替する新しいメンテナンスフリーな小型・省エネ光源として期待値が高いことも、先ほどお伝えした過去ストップ高銘柄の上昇理由と重なります。
9月13日、前場は1,036円から始まり、9時4分には1,146円まで上昇。前日と比べて気配値の数字がきれいに並んでおり、また売気配株数が6円高く設定されていることから、現在の株価よりさらに値上がりしそうだと推測できます。

買い数量が増えて、売り板(例では1,108円)がなくなって、数字が一個上に上がるような場合は株価が上昇していることになりますし、逆に売りの数量が増え、買い板(例では1,102円)がなくなって数字が一個下に下がるようであれば株価が下落していることになります。
ヘリオスTHの場合、何度も上下し非常に活発に株価が変動していますが注文状況は下落してもすぐに売り注文が消える「買い優勢」の状況が多く見られ、気配値の数字が揃っていて「板が厚く」、併せて株価と比較してPTS株価も似たような状態が続いていることから、まだ伸びしろがありそうだと推測することができます。
推測が裏付けた通り前場が終わった板はさらに厚みが増し、PTSは前場の後も変わらず活発に動いています。

ストップ高銘柄が翌朝も上昇する条件は、「買い優勢」で「板が厚い」こと!
板を見て「今は売買どちらが優勢なのか」、「板は厚いか、薄いか」を投資判断の基準にしましょう。
ストップ高翌日のチャートパターン
ストップ高になると、チャートにも変化が現れます。株価の動きを見る株価チャートは、主に株価の上昇を陽線、下落は陰線で示すローソク足、成立した売買数量の合計を棒グラフで示した出来高、一定期間の株価の平均値を折れ線グラフにした移動平均線の3点で構成されています。
今回もヘリオスTHを例に、ストップ高当日と翌日のチャートから「翌日も上昇するパターン」を見てみましょう。

まずローソク足です。10日の材料発表後、11日は陽の大引坊主が描かれました。この太陽線は始値から終値までの間に下落をするも、その後上昇を続け終値が最高値であることを示しており、さらなる価格上昇が期待できる買いサインが出ていることがわかります。サインを裏付ける翌日は勢いそのままストップ高に。
しかし、ストップ高の翌日の13日は取引時間中1,293円という高値をつけましたが、その後売りの圧力にあったことがわかる長い上ヒゲがついて取引終了になりました。このことから翌日はさらに売り圧力が強くなり株価が下落しそうなことが推測できるため、売りサインが出たと判断できます。
ローソク足で買い相場を見るサインは紹介した「陽の大引け坊主」以外にもたくさんありますので、実際のチャートと照らし合わせながら気になる足は覚えておきましょう。
続いて、移動平均線をみてみましょう。

9月7日前後からの日足チャートを見てみると、ローソク足が移動平均線の下にあったところから、11日には移動平均線を通り、12日のストップ高には完全に追い抜いています。このようにローソク足が移動平均線の上に突破したら、買いサインです。
移動平均線は短期中期長期の3つの線に分かれています。
10日と11日の間に注目すると、直近5営業日を平均した5日移動平均線が25日平均線と75日平均線を追い抜い抜いていることがわかります。
このように短期の移動平均線が長期の移動平均線を上抜ける現象をゴールデンクロスといい、多くの投資家が目安に使っている有名な買いサインです。
反対に、短期の移動平均線が長期の移動平均線を下抜ける現象をデッドクロスといい、こちらも有名な売りサインの1つです。
移動平均線の2点だけを踏まえると、ヘリオスTHはまだまだ上昇の余地を残していそうだと判断できそうです。
では最後に出来高から上昇パターンを見てみましょう。
日付 | 出来高 |
---|---|
9月10日 | 39,100 |
9月11日 | 1,639,200(S高) |
9月12日 | 23,500 |
9月13日 | 12,191,700 |

ストップ高になった日の出来高は、2018年3月まで遡っても前例がないほど桁違いの高い数字で、この出来高からもいかに10日のニュースで投資家の注目度が高まっていたかがわかります。
ストップ高になったため12日の出来高はかなり落ち込んだように見えますが、13日は11日を大幅に上回り、出来高急上昇ランキングにもランクインしました。
元々ヘリオスTHは5月に発表された決算が不安視され安値で売られ気味だったため、出来高も高い日で100,000前後、低いと20,000くらいと注目度も低く、株価はしばらく600円から700円辺りを推移しているような状況でした。
このような不人気で株価にあまり動きのない銘柄の出来高が急増した場合は、買いサインといえます。注目されるだけの材料があり、株を手に入れたい人が殺到しているからです。13日にさらに出来高が急増したヘリオスTHも、それまでの出来高と比較し11日の出来高を見て、より多くの投資家が集まったと考えられますね。
ただし、どんな材料で上昇しているのかを確認してから購入をしましょう。上昇が一時的な可能性もあり、買ったはいいがすぐに下落してしまった、と損失を被ることにもなりかねません。
さて、ここまでの3つの投資戦略を踏まえれば、翌日どのように推移するのか把握できる自信が持てるようになったのではないでしょうか。ぜひこれらを参考に損の少ない、利益は確実に掴める理想のストップ高投資法を目指しましょう。
- 今後の期待値が高いポジティブな材料があるか探すこと!
- 板を見て「買い優勢」で「板が厚い」か判断すること!
- ローソク足・移動平均線・出来高の買いサインを見逃さないこと!
まとめ
ストップ高やストップ安の仕組み、ストップ高になったときの対処法、過去のストップ高銘柄から翌日の予想をする投資戦略などをご紹介しました。
これで、突然保有銘柄がストップ高・ストップ安になってしまったときも、落ち着いて売買ができ、利益を得やすくなったのではないでしょうか。
ただし、ご紹介した例はあくまで過去の事例にすぎません。ストップ高・ストップ安銘柄の値動きは複雑ですので、多数の指標やサインを活用してきちんとリスク管理を行うよう心がけましょう。